夢を見ていた

夢を見ていた。補助輪付きの自転車に乗る幼い娘。その後ろに付きそうオレ。ベンチに座って穏やかな微笑みで見守る妻。日光の暖かさ。桜の花びらを揺らすそよ風。本当に何でもない休みの日の光景。幸せだったあの春の日。そんな光景が急に色を失い、すべての動きが止まる。あぁまただ。またこの夢だ。夢だと分かっている。この先の展開も分かっている。でも体は動かない。自分では何一つコントロールできない。妻と娘の顔がだんだんとボヤけどうしても思い出せなくなる。涙が頬を伝う。叫ぶ。その声はどこにも届かない。記憶が残酷なほどに薄れていく・・・

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